難聴の子どもを預かる幼保園・学校の方へ

ここでは、保育園や幼稚園、学校で、難聴の子どもと共生していくためのヒントを得ることができます。

難聴の子どもは、先生の話がよく聞こえなくても、周りの子を見て合わせて行動しようとします。

そのため、一見、何不自由なく過ごしているように見えることもありますが、実は大きなストレスを抱えながら過ごしていることもあります

難聴は、見えにくい障がいと言われる所以です。

ですが、ちょっとした気遣いやサポートがあるだけで、お互い随分円滑にコミュニケーションが取れるようになります

ぜひ、参考にされてください。

 

難聴を持つ人の聞こえ方については、「子どもの難聴について」をご覧ください。

 

「平等」と「公正」の違い


難聴は見えにくい障がい」と言われていまして、ある程度他の子どもと同じように動けるため、他の健聴の子たちと同様に平等に扱う方がいいと考えてしまうことがあるかもしれません。

 

しかしながら、平等と公正は違います

https://edtrust.org/the-equity-line/equity-and-equality-are-not-equal/より引用)

 

この図は、左が「平等」、右が「公正」を表しています。

 

こちらのサイトでも、平等と公正について解説してくれています。

https://buzzap.jp/news/20141111-equity-vs-equality/より引用~

「平等は公正さを推進させるために全員に対して同じものを与える。しかしそれが正常に機能するのは全員のスタート地点が同じ場合に限られる。この場合では全員の身長が同じ時だ」
「公正さは人々を同じ機会へのアクセシビリティを確保すること。個人それぞれの差異や来歴は、何らかの機会への参加に対し障壁となることがある。なので最初にまず公正さが担保されて初めて平等を得ることができる」

~引用終わり~ 

 

この図を見れば、平等と公正の違いが一目で理解でき、公正の重要性もわかるのではないでしょうか。

例えば、保育園や幼稚園で、並びの順番は背の低い順にするという決めごとがあった場合、難聴ではあっても背の高い子は後ろに並ぶということが平等です。
並びの順番は背の低い順だけど、背の高い難聴の子が後ろになると話が聞こえにくいから、一番前にきてもらうことは公正です。

 

「難聴の子は歌が苦手な子が多く、歌詞もなく聞きながら覚えるのは難しいので、事前に歌詞をもらえれば、字から歌詞を覚えられて、歌いやすくなるので助かる」

 

「難聴の子は、周りが騒がしいと話が聞こえにくいから、友達ともうまく遊べなくなり、一人で遊ぶことが多くなることもある(本当は友達と遊びたいけど)ので、一人で手持無沙汰な様子でいるときなど、たまに先生が話しかけてくれると嬉しい」

 

これらは、保護者側からの公正的な要素のお願いです。

 

平等の視点で見ますと、

一人だけ特別扱いはできないとなるでしょうし、

人それぞれ個性があるから、歌がうまく歌えなくたっていいんですよとなるかもしれませんし、

この時期の子どもは一人の世界をつくることも重要だから、一人の時にはあえて声はかけてないんですよとなるかもしれません。

 

しかし、公正な視点で見ると、これらのサポートは、難聴の子どもの成長を促進するということもわかるのではないでしょうか。

ご自身の経験と知識に裏付けられた、効果的な保育・教育法があることとは思いますが、難聴の子どもは、平等の前に、まず公正なサポートが必要なのです。

 

繰り返しになりますが、難聴は見えにくい障がいですので、平等に扱うことがベストと思ってしまうことが多いかもしれません。しかし、平等の前にまず公正に関わることが、難聴の子どもの成長を助けるということをわかっていただけると大変嬉しく思います。


幼稚園・保育園で有効な、ちょっとしたサポートや気遣い


幼稚園・保育園のイメージ

【なるべく話す人の前にいてもらう】

何かを話すときは、なるべく話す人の前に連れてきてもらえると、本人は聞き取りやすくなります。

とはいえ、未就学児は動きまくりますので、可能な限りで大丈夫です。

 

【動くときは2列目も効果的】

何かを話すだけなら1列目が聞き取りやすいですが、体操をするとか、何かの作業をするときなどは、前の友達の動きが見える2列目にいさせるのも効果的です。

お手本となる子が見えると安心する子も多いです。

 

【正面から、口の動きを見せて話す】

難聴の子は、口の動きも見ながら言葉を理解します。未満児でも、口の動きは見ています。

そして、補聴器は前からの音を拾いやすく、後ろからの音は拾いにくい特性があります。

正面から、ゆっくりと口の動きを見せながら話すと、話を理解してもらいやすくなります。

 

【指示や説明は復唱してもらう】

指示や説明をしたとき、「わかった?」と聞くと、難聴の子は、わかってなくても「はい」と言ってしまうことが多いようです。

ですので、「次どうするの?」などと、次の行動を復唱してもらうようにすると、わかってるかわかってないかが明確になります。

【サインを使う】

補聴器は、話している人の声だけでなく、周りの音も同じように大きくする特性がありますので、周りが騒がしい場所では、話している内容が非常にわかりにくくなります。

簡単なサインを併用しながら話すと、子どもも理解しやすくなります。

サインを使ってもらえることは、保護者にとっては大変ありがたいことですので、保護者からお願いされることもあるでしょうが、そこまでは頼みにくいと思っている保護者もいるかもしれません。

特に話がなければ、こちらから聞いてあげれば、きっと大歓迎されるはずです。

 

【加配保育士を付ける】

難聴の子は、周りが騒がしい環境で、先生など一人の声を拾うのが苦手です。ですので、加配保育士さんを配置できれば、話している人の話を復唱できたりしますので、ヌケモレや二度手間が減り、安全に過ごしやすくなるだけでなく、次にやることなどの理解が進み、子どもの成長も促進されます。

加配申請は通っても、増員分の募集に応募が来るかという心配があるかもしれませんが、市には、保育士の求人求職者登録システムもありますので、ぜひ、前向きにご検討していただけるとありがたいです。

 

【イスの足にテニスボールをつける】

イスを引く音は、皆が一斉に行うので、難聴の子には響いてつらいということがよくあります。

イスの足にテニスボールをはめて、音を出さないようにする措置がよくとられています。

 

保護者から相談された際は、ぜひご協力いただけると助かります。

【ワイヤレスマイクを使う】

ワイヤレスマイクから補聴器に直接音を飛ばすシステムがあります。これを使うと騒がしい環境の中でも、先生の指示や説明の声をはっきりと届けることができます。

未満児までは、聞こえの訓練上も使わない方がいい場合があったりしますが、以上児になると、お互いメリットが生まれます。

常時使うわけではなく、まずは「絵本を読むときだけ」などから通常は始めます。

保護者からお願いされることもあるでしょうし、子どもさんの様子を見て、あった方がいいなと思われましたら、まずは保護者の方と相談されてください。

 

【聞き取りにくい声があることを知ってもらう】

補聴器の特性上、正面からの音は拾いやすいですが、後ろからの音は拾いにくくなります。

また、一度に大勢の人が話している声は、非常に聞き取りにくくなります。

「子どもの難聴について」をご覧ください。

 

もし、「無視した!」など言われることがあれば、「後ろからの声は聞き取りにくいんだよ」、「周りが騒がしいと聞こえにくいんだよ」、「だから無視してるわけじゃないんだよ」ということを教えていただけると大変嬉しいです。

 

【補聴器カバーに隠された思い】

先天性難聴の子は、早い子は0歳の頃から、その体に比べて大きな補聴器を耳に付けて生活しています。

親としては、少しでもかわいく見せたいという思いがあり、かわいいデザインの補聴器カバーをつけている子もいます。

園のルールもあるかとは思いますが、このような親の気持ちがあるということは知っていただけると嬉しく思います。


小学校で有効なサポート


小学校のイメージ

【イスの足にテニスボールをつける】

イスを引く音は、皆が一斉に行うので、難聴の子には響いてつらいということがよくあります。

イスの足にテニスボールをはめて、音を出さないようにする措置がよくとられています。

 

保護者から相談された際は、ぜひご協力いただけると助かります。

【ワイヤレスマイクを使う】

ワイヤレスマイクから補聴器に直接音を飛ばすシステムがあります。これを使うと騒がしい環境の中でも、先生の指示や説明の声をはっきりと届けることができます。

授業中に使えば、子どもとしては勉強内容の理解は進みますし、聞きもらしなども減らすことができます。

 

保護者から相談された際は、ぜひご協力いただけると助かります。

【聞き取りにくい声があることを理解してもらう】

補聴器の特性上、正面からの音は拾いやすいですが、後ろからの音は拾いにくくなります。

また、一度に大勢の人が話している声は、非常に聞き取りにくくなります。

「子どもの難聴について」をご覧ください。

 

「後ろから声をかけると、気づかないことがある」

「みんなが一斉に話しているときは、話を拾いにくい」

ということを、他の生徒さんにも理解してもらえると、「無視した」と言われることを防げますし、話し合いのときも一人ずつ話すようにすれば、お互い理解が進むようになると思います。


ほんの少しの気遣いで、お互い随分過ごしやすくなります。

もし、あなたの園や学校に難聴の子がいましたら、ぜひ、少しずつできることから取り入れていただけると大変嬉しく思います。

 

まだまだ保育園や幼稚園、学校で、難聴の子と共生していくためのアイディアはありますので、ブログにも随時アップしていきます。

よろしければ、ぜひこちらもご覧ください↓

 

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